「見る雀」への推移を雀荘は如何に食い止められるか

2023年01月07日

さて、気がつけば2022年を通り過ぎ2023年になってしまっていた。公私共に色んなことが起こった先年ではあったが、無事に年を越せたことがまずは重畳である。

さて、数年前にも綴ったレジャー白書が発行された。麻雀業界の人口推移は年単位で見れば微増・微減を繰り返しているが数年単位で俯瞰するとその推移は漸減の一途を辿っている。そもそも論として21世紀の5分の1が経過したこの世の中において、ICTは高速化を極めた結果現実世界と遜色ない交流を可能にしている。「2次元セカイ」そのものに億劫な層を除けば家からわざわざ出なくても無制限に交流を可能とする時代の変化は一般層から眺めると進歩とも言える。

とは言え、雀荘業界から見た場合にこの流れは危険である、と言うのは何年も前から声を大にして言い続けていたではあるが、客側から見た場合はその本質は麻雀には変わりなく、遊技媒体が3次元から2次元へと移行しただけにすぎない。が、業種として見た場合の雀荘業はそれで食っていくしか無い業界であるのに対して、IT分野の業界は環境構築のノウハウさえあればちぎって投げる程にはジャンルが有り余っている。現に見る雀やネット麻雀に移行したであろう層の人口加算は、麻雀人口では無くそれぞれ「動画鑑賞」と「オンラインゲーム」の枠に組み入れられている。その実数は変わらずとも別の界隈へと流出し続けている人口をどうにかして食い止める必要がある。

雀荘の数の減少は更に顕著である。麻雀業界が最も飛ぶ鳥を落とす勢いがあったのは1980年代初頭と言うのは以前書いたが、1982年の時点での麻雀遊技人口が2140万人である。同年の雀荘営業数が警察庁の発表では35800店(警察の把握がこれということは裏も含めると40000店近くあったのは想像に難くない)を数えたが、その後2000年には約20000店、2020年には7500店にまで下がっている。これを見る限りではコロナ禍の影響で遊技人口と店舗数の減少に拍車がかかったのは間違いないが、コロナが主な原因と言うには疑問が残る。

とは言えこれも何度目かの話ではあるが、遊技人口や店舗数の減少は何も麻雀業界に限った話では無い。同じくレジャー白書のデータによればここ10年間でパチンコの遊技人口は1600万人から800万人に半減。ゲームセンターの利用人口も3000万人から1500万人に半減。家庭用ゲームの利用者数も4000万人から2000万人へと半減と、他の娯楽産業も10年という長いようで短いスパンで冷静に考えると凄い人数が減少している。そう考えると1240万人から510万人への半減も他の例に漏れずというだけと言ってしまえばそれまでではある。それよりは市場規模が150億円もの減少を起こしている方が懸念材料にはなり得るか。

まぁ麻雀に興味をもってくれていれば最悪打ちはしなくても...というのは究極的にはそうだが、雀荘も商売であって経済活動であるが故にそうも言ってられない。

Mリーグ機構が調査したデータによればMリーグを視聴する人口が500万人に対し、その6割である300万人もの人は麻雀そのものが未経験であるという。このデータは興味深い事実を示している。すなわち、ボードゲームなどの知能スポーツはそもそも自分自身もプレイするゲームであってこそ初めて視聴するという流れの崩壊である。

サッカーや野球をしたことは無いが視聴するという人間は多いだろう。それはそもそもこういった身体スポーツは夢を描く糧にこそなれ参考になるような類のものではないからだ。一方知能スポーツの視聴はむしろ自分自身が今後のプレイングとして役立つとて視聴する層こそ多けれ、全く関心が無いのに見てもしょうがないものであった。自炊もしないのに料理番組を見ても何ら知識以上の実利が得られないのと同じである。その価値観がシフトし始めているのである。つまりは、経験が無い人間でも楽しめる娯楽へと変化しているのだ。

同じ調査では、リアル麻雀の遊技人口が人口の3.8%(≒480万人。これはレジャー白書の510万人と近似値でありほぼ一致する)に対してネット麻雀遊技人口は5.1%(≒640万人)とのデータがある。さらにはこのネット麻雀遊技者640万人の内300万人はリアル麻雀の経験が無いという(なお、リアル麻雀遊技者は3分の2がネット麻雀をした経験があるとの調査結果もある)。本質は変わらないにせよ、ある世代からは麻雀はネットでするものという認識が主流になりつつあるのだ。ましてや、現実世界の麻雀からネット麻雀へと移行する層はいても、ネット麻雀からリアル麻雀へと移行する層は比して少ないのであれば、端的なことを言ってしまえば、この業界が斜陽産業と化してしまったのかもしれない。

それを言い出したら80年前の大戦の際も風俗業界は「不要不急の産業」の一言で完全に営業を停止させられたし、業界そのものの体制がその当時から何ら変化をしなかったのであればあるいは傾き始めたまま時代を生き抜いてこれただけなのかもしれない。結局のところタバコを吸わない人やコミュニケーションが苦手な人からすればそれだけで雀荘は行きたい場所では無くなるし、その層を拾い切ることができるのがネット麻雀の利点なのだ。この棲み分けを積極的に考えず、ネット麻雀に遊技人口が抜かれてなお『ネット麻雀って笑』みたいな姿勢を続けてしまえば、それこそ本当に斜陽産業の日が沈む日が来るやもしれない。

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