麻雀における呼称とその由来を探る
世の中において割と使う言葉なのに由来を意外に知らない言葉と言うものがある。黒歴史と言う言葉の元ネタはガンダムだし、テンパると言う言葉の由来は麻雀にある。
しかし、その麻雀においても呼称の揺れがあったり、そもそも由来が分からない言葉は一定数存在する。今回はそこを掘り下げていきたい。
ドラの由来は意外に知られていない。中国っぽいから銅鑼?とか思ってる人もいないとも言い切れないが、これはドラゴンが略されたものである。英語ならアメリカ麻雀由来?となったりするがそうでもない。ドラのシステムは日本麻雀で生み出されたものだからだ。アメリカ麻雀においては役牌白・發・中の三種をそれぞれホワイトドラゴン・グリーンドラゴン・レッドドラゴンと言い、それらの集合役である大三元をビッグドラゴン、小三元をスモールドラゴンと言う。ドラゴン=役牌が1翻と言う所から派生して、ドラと言う呼称が発生した。余談ではあるが、同じく金銭的なイメージがあるドラ息子のドラは麻雀とは関係なく寺の鐘(銅鑼)のことである。鐘を突く→金を尽くの言葉遊びである。
3枚見えの嵌張に放銃した時に、ラス牌だったーのようなことを言う人がいるが、このラス牌がラストの牌、つまりは最後の牌を意味するのは流石に想像がつくだろう。では、リン牌と言う言葉は分かるだろうか。これも同じ意味なのだが、これは中国麻雀でまさに3枚見えの4枚目を指す言葉「零牌」から来ている。これは本場由来の用語だ。
オーラスは略されているだけでオールラスト、つまりは局全ての最後を表す言葉である。ラス前と言う言葉を思いついた人はある意味天才的では?
早い立直は14索の格言も、今となっては早リーにとりあえず言っているだけの人も少なくないと思うが、14筒や69萬ではダメな由来が2つある。1つは14索が急ぎすぎの語呂合わせである点だ。つまりは「い」「そ」ぎ「す」ぎ、と言うことである。もう1つはまだ麻雀が手積みでイカサマ全盛期だった時代に、自山の端に好きな牌を積み込み、タイミングを見計らって手牌と入れ替えて速攻で和了るという技があった。そこに、盲牌の容易な23索を積み込めば、当然待ちは14索になる。つまりはチョッパヤの立直はすり替えの14索待ちと言うことだ。片や親父ギャグ、此方古い時代の話なのである。
面白いのが後付け。とりあえず適当な牌を鳴いて片和了りの役牌を出和了りするのが後付けで、鳴いた牌が手役との関連性が薄いとダメなのが先付け(途中で役牌を鳴く中付けと言うのもあるが、厳密にはこれも後付け)と言うのが現在の使い方だが、昔は、役を後から付けるのを先付けと呼んだ。これは、そもそも先付けが「とりあえず小切手を発行して、後から現金に交換する」と言う意味の金融用語であり、小切手に先、つまりは未来の日付が印字されていたことに由来する。未来の日付が記入された小切手はその時点では紙切れであり、すなわち手役に絡まない面子、現金はすなわち和了役としての面で通じるものがあったので先付けと呼ばれるようになったのだ。しかし、時間の経過とともに意味が逆転し、現在のようにそれらは後付けと呼ばれるようになったのだ。
他にも私は意味を知っているがほとんど誰も使わない用語も多くある。触らずの14牌や骰子、ストリップやスカートめくりや疝気筋など(うわ、サ行ばっかり...笑)
触らずの14牌とは、牌の上下を揃える人が触らなくてもいい上下対称の14牌(1234589筒・245689索・白)のことであり、余談だがこれらのみで手役を構成すると中国麻雀では推不倒と言う役が付く(推不倒:押しても倒れないの意。上下対称だから重心がズレてないと言うことだろうか...)
骰子はシャイツと読む。つまりはサイコロである。恐らくサイコロと打つと大概の変換ソフトでは出るはずだが、サイコロをシャイツと言う人を未だに見たことがない.....。
ストリップとは裸単騎のことである。ストリップとはだかのつながりがわからないひとはおとうさんかおかあさんかまわりのおとなのひとにきいてみてね!(麻雀荘は18歳未満の方の出入りは禁止です)
スカートめくりとは、本来のツモ牌とは別の位置の牌を引いてしまうことである。これは本当によく見る話で、別の所からツモってきてしまう行為にも実は名前があったわけだ。めくったらダメな場所をめくる=スカートめくりという訳だ(公然猥褻は犯罪です)
疝気筋とは裏筋の裏筋のことである。間四間と同じく、待ちを読む際に使う言葉ではあるが、これも言葉の使い時は意外に多くない。1の裏筋は25、疝気筋は36である。これをどう使うのかを雀力の乏しい私が解説するのも恐縮だが、例えば相手が序盤に1を切っていたとして、これが14と持っているところに何かを引いて1を切ったと仮定する。両面待ちの形を取るなら引いてきた牌は3か5の2点に絞れる。この時、3を引いたなら当たり牌は1の裏筋25、5を引いたなら当たり牌は疝気筋の36となる。すなわち、序盤の捨て牌がその筋の牌が両面の形になった為に切り出されたという前提条件のもとで、疝気筋は裏筋と五分五分の危険性を持つことになる。が、これが中盤以降になると、その打たれた1は単純に4とのスライドかもしれないし、あるいは単純にあふれた不要牌かもしれない。つまりは裏筋・跨ぎ筋・疝気筋・ドラ筋・暗刻筋など全般が危険になり得る。そのため身も蓋もないことを言ってしまえば、疝気筋などと言わずとも、無筋の一言で済む話なのである。
どうだろうか。知っていること、知らないことがあっただろうか。ここで全てを書き連ねるとあまりにも長くなるので、パッと思いつくものだけでまとめはした。が、麻雀にはまだまだ多くの聞いたことのない用語が数多く存在する。そしてそれらは使われることがなくなると同時に消滅し始めるのだ。私はそれを防ぐために小難しい単語を日々お客さんに振っている、と言うのは嘘だが、こんなものや行為に名前があったのかと驚かされることは未だにある。だが、言葉で覚えていても使わなければ何の意味もない。読んでいただいた人が、多くの言葉に興味を持つ礎となれれば幸いである。
最後に麻雀と言う名前であるが、これは現在の中国ではスズメ自体を指す言葉となっている。雀と言うのは小鳥のことで、麻と言うのは斑点のことである。すなわち、スズメを指して麻雀と言うのである。かつては馬吊や馬将と同様に麻雀の表記もされていたが、これらが融合し、中国では麻将と表現される。ちなみに馬吊・馬将・麻将の読み方はマーチャンであり、これが訛ってマージャンとなった。麻雀の字面でも慣用的にマージャンと読まれてきたが、これは本来マーチャオと読む。そう、あの全国チェーンの名前はここから取っている。燕雀いづくんぞ鴻鵠の志を知らんやと言う言葉もあるが、麻雀業界の広告もとい鴻鵠となれるのを夢見て、私は今日も辛酸を舐めるのであった。