パチンコの「遊タイム」のもたらす未来
とうとうこの分野に手を出してしまうのかと思わないでもないが、結局のところ物の喩えで最初に思いつくのはパチンコだし、この分野はある程度、と言うか人生のかなり重要なファクターとなってしまっている。別のギャンブルの話をするかと言われたところで、根本論として麻雀は頭脳ゲームとして一分野を構築しなおしているし、パチンコはギャンブルではなく「遊技」である。うん、技術力を競うスポーツであって、あれをギャンブルと思っている人なんt、おっと誰か来たようだ...
まぁそんな茶番は置いといてだ。昨年の末、パチンコファンに激震が走った。パチンコに天井を付けることが可能になったと言うのだ。と言うのも、一定回転(各台の確率分母の2.5~3倍)を突破した台が、大当たりを挟まずに電サポに入ることが、警察庁による「技術上の規格解釈基準」の改定によって可能となったのだ。
パチンコが1ミリも分からないという人がどれほどいるかは想像もつかないが、そもそも一般的なパチンコの流れを説明すると、盤面の左から球を打ち出し、台の中央下部分にある入賞口(つまりは世間一般で言う所のヘソである)に球を入賞させて、変動させると言うのが通常時の一連の流れである。台の大当たりを引くことによって特定入賞口(同、アタッカー)を開く権利をもらい、その後確率変動の有る無し等挟んだのち、円滑な変動消化を可能にする電動チューリップという装置(同、電チュー)を作動させて右から消化するというのが大当たり後の流れである(電チュー権利をもらうことを電動チューリップサポート、つまりは電サポと言う)。ここで重要なのは、一般的なパチンコ台のシステムにおいて、左からヘソで回していた台が右から電サポで回せるようになるには大当たりを挟む必要があった。しかし先述の「技術上の規格解釈基準(以下、解釈基準と称する)」ではこの大当たりには出玉を挟む必要性は明記されていなかったので、これを逆手にとって大当たりを引いたにもかかわらず出玉の払い出しをほぼ伴わない「突然確変(以下、突確)」と呼ばれる大当たりが、成立する契機となったのである。それまでの感覚で言えば、『当たったのに球が出ないなんて損』と言う意見が大多数であったが、これを演出上の見せ方でユーザーに馴染ませることに成功したのが、2004年に確変割合上限が撤廃されてから、ビスティによって販売された「新世紀エヴァンゲリオン」である(突確第一号は平和の「木枯し紋次郎」だが、この台が出た当時の確変割合上限が50%だったため、出玉あり確変の割合が減ることが不評であった)。「引いたのは大当たりである以上損なのだが、打ち手にそうと思わせない(つまりはそういう演出だと思わせる)」と言う突確にユーザーは目新しさを覚え、エヴァシリーズは現在まで続くヒット作となったのである。
さて、解釈基準はちょくちょく改定されるものだが、この改定は珍しい。そうなるとそれまでの台でハマってたのは何だったんだって話だし。ただ、大当たりを挟まず電サポが付く台が今までに無かったわけではない。古い解釈基準ではそれらは違反では無かった。が、それらを搭載する機種は結局ウリがそこ一本になるし、ユーザーからすればそこまでハマるまで自分では打ちたくないし、誰かがハメた台を効率よく回す、「ハイエナ打ち」が横行して、結局通路と化すのは目に見えている。結果それらは流行とはならず、単発で終わることとなった。
今回導入される天井時短は業界によって「遊タイム」と呼称されている。そのルールが一発化しないかは不安があるが、それまでに何回か出たノーマル確変機の時短とは違い、現在のパチンコ台には一種二種やV-STなど、左右の大当たりの確率が違ったり振り分けが違ったりする台が多数存在する。そうなると、いよいよ左でアタマから回すより天井手前から回したくなるし、ハイエナが蔓延りだすのはまず間違いないと思える。
パチンコ・パチスロ業界には時々天才の発想を持った人間が現れることがある。65%の確変割合上限のルールの中表面上98.8%の確変継続率を可能にした「タイガーマスク3」。天井が搭載できない純増2.0枚上限の5.9号機ルールにおいて天井搭載純増5枚を可能にした「ルパン三世世界解剖」。パチンコの大当たりは一つずつ消化するルールの中最大4つまで大当たりのストックを可能にした「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」。他にもゼロボーナスやスラッシュATなど、数々の名機名システムの影には解釈基準を隅々まで読み込んで新しい可能性を模索した開発者たちがいる。今回の遊タイムにしてもその技術者たちが「新しい歴史」の始まりに際してどのような「新しい可能性」を見せてくれるのか、楽しみではある。もし書くことが見つからなかったら、あるいはそのシステムについても解説してみたい。